『都会の星座の物語』 2001、9、8
前のマンション工事が進んできて、またまた青空がかき消されてしまう勢いです。
以前住んでいたマンションの横に高層ビルができたときに作ったお話を載せます。
私の空に星座がかからなくなってから、二年たった。
そして、今日も隣では、長い腕をのばした黄色いクレーンが、
地響きをたてながら作業をしている。
毎夜毎夜私に空の高さを教え、
時の巡りの果てしなさを語ってきたあの星座は
どこへ行ってしまったのだろう。
ここへ越してきた頃は、
ベランダの窓から深い夜空が南の方にひろがって、
火星がぽつんんとかがやき、
そしてあのアンタレスが挑戦的な眼差しをむけていた。
それを見ると、この都会の空の下でも新しい星座の物語を作っていけそうな気持ちになったものだ。
でも、それもしばらくのことだった。
やがて、道路を隔てた南の空の下に、
夜でも上から下まで煌々と灯を点したマンションが建って、
私の空はかき消されてしまったのだった。
それでも、都会の星座の物語を紡ぐ仲間たちはいた。
空の主役たちには悪いが、
適当に夜空に輝くネオンたちにも登場願って、新しい物語を考えた。
見えなくなったさそりに恋する牛丼屋のオレンジの看板の物語だった。
そう、彼は、空のどこかにいるさそりに対し
24時間の愛をささげているのだ。
だが、今またこのベランダの東側に、新しいマンションの工事が始まり、
いよいよあのネオンもすっかり見えなくなってしまう。
都会の星座の物語は、いつでもこんなふうに、
荒々しい人の営みによって奪われていくのくのか。
そう思うと、私の方がどこか違くに行ってしまいたくなる。
ある夜、私は古代から変わることなく輝き続ける星座の瞬きに手をひかれ、
まっすぐに空を昇ってゆく。
黄色いクレーンが呆れたように私を眺め、地上から手を振る。
赤い帽子をおさえながら、見たこともない数々の星座に出会った私は、
そのーつーつと握手をし、ステップを踏み、次から次へ新しいダンスを踊る。
踊り疲れても踊りきれないほどの、ダンサーたちが待ち受け、
私の両手は星の明かりで青くなり、私の頬は星の明かりでももいろに光る。
そしてその頃になってはじめて気がつくのだった。
あの不粋なマンションが、屋根ごとコンペイトウの小さな家に変わっていることに。
そばで、オレンジのネオンが笑っている。
以前住んでいたマンションの横に高層ビルができたときに作ったお話を載せます。
私の空に星座がかからなくなってから、二年たった。
そして、今日も隣では、長い腕をのばした黄色いクレーンが、
地響きをたてながら作業をしている。
毎夜毎夜私に空の高さを教え、
時の巡りの果てしなさを語ってきたあの星座は
どこへ行ってしまったのだろう。
ここへ越してきた頃は、
ベランダの窓から深い夜空が南の方にひろがって、
火星がぽつんんとかがやき、
そしてあのアンタレスが挑戦的な眼差しをむけていた。
それを見ると、この都会の空の下でも新しい星座の物語を作っていけそうな気持ちになったものだ。
でも、それもしばらくのことだった。
やがて、道路を隔てた南の空の下に、
夜でも上から下まで煌々と灯を点したマンションが建って、
私の空はかき消されてしまったのだった。
それでも、都会の星座の物語を紡ぐ仲間たちはいた。
空の主役たちには悪いが、
適当に夜空に輝くネオンたちにも登場願って、新しい物語を考えた。
見えなくなったさそりに恋する牛丼屋のオレンジの看板の物語だった。
そう、彼は、空のどこかにいるさそりに対し
24時間の愛をささげているのだ。
だが、今またこのベランダの東側に、新しいマンションの工事が始まり、
いよいよあのネオンもすっかり見えなくなってしまう。
都会の星座の物語は、いつでもこんなふうに、
荒々しい人の営みによって奪われていくのくのか。
そう思うと、私の方がどこか違くに行ってしまいたくなる。
ある夜、私は古代から変わることなく輝き続ける星座の瞬きに手をひかれ、
まっすぐに空を昇ってゆく。
黄色いクレーンが呆れたように私を眺め、地上から手を振る。
赤い帽子をおさえながら、見たこともない数々の星座に出会った私は、
そのーつーつと握手をし、ステップを踏み、次から次へ新しいダンスを踊る。
踊り疲れても踊りきれないほどの、ダンサーたちが待ち受け、
私の両手は星の明かりで青くなり、私の頬は星の明かりでももいろに光る。
そしてその頃になってはじめて気がつくのだった。
あの不粋なマンションが、屋根ごとコンペイトウの小さな家に変わっていることに。
そばで、オレンジのネオンが笑っている。
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